社会包摂事業

社会的弱者の自立支援に関する舞台芸術からのアプローチ事業

1,はじめに

最初にこのような事業を福岡で始められないかと思った時の光景を、私はできるだけ忘れないように心がけています。
私たちの普段の仕事場は、演劇やダンスが公演されるホールや劇場です。お客様をお見送りして、福岡の中心部から かなり田舎の自宅に帰る私にとってのホッとするいつもの帰宅時間でした。 2009年の冬。今ではすでにピカピカになってしまった博多駅の以前の建物の前に、段ボールをいくつも持った 私と同年代から更に年上のたくさんの男性が、駅前に大勢集まっていました。そして23時を過ぎた途端、皆自分にとっての 心地よい場所に向かって一目散に急ぐのです。私と同じ、今日眠る場所に向かって。
私には演劇しかできないけれど、彼らと何かを共有できないかと思って、調べたり聞いたりする中で 現在実施中のこのようなカタチの事業になりました。そしてこれはこれからもどんどん変化していくのだと思います。社会の変化とともに。
演劇やダンスや音楽や美術がみんなの心を動かすために存在しているのであれば、きっとこの取組も、 今現在の日本という国にいるちょっと生きづらくなってしまった私たちに対して少し生きやすくなる手助けとなれば良いなと思っています。
AMCF代表 糸山裕子


2,社会的弱者の自立支援に関する舞台芸術からのアプローチ事業とは

ホームレス等の社会的弱者に対して、 それぞれの専門分野を持つ多様な人々がもっと関心をもって関わる社会を目指して、 演劇を使ったコミュニケーション講座を開講している。
日本におけるホームレス等への自立支援は、支援の方法が即物的な第一段階(食物・住居・医療の提供)を経て、 第二段階(生活に必要な知識の提供・就労相談→就労・メンタル面でのサポート)状態にあると感じる。 しかしながらこの第二段階のサポートについては、第一段階で深いかかわりを持ち献身してこられた方々に力だけでなく、 もっと幅広い分野の多様な人々が自分の持っている得意分野を活かして積極的に支援するという態度を示すことが、 社会的弱者当事者の心を開き、社会の中で自立しようとする意志を持つ手助けになるのではないかと考えた。
舞台芸術の一般的な手法である各種ワークショップを実施することで、 その手法の大きな主題である人間関係のコミュニケーション技術を習得し、人々のつながりの中から、 本来の人間的充足感を感じる市民となり自立を確実なものとしたい。 更にホームレス等社会的弱者の人権を認識しやすくするようなシンポジウムや公演、公開ワークショップ等を実施して、 無関心となりがちなこの問題に一般市民の目をむけるきっかけをつくりたいと考えている。


3,実施実績

    内容 実施場所 助成団体
平成23年度
(2011)
「演劇ワークショップ」開催
2011年8月−10月 第1クール
2011年12月−2012年1月 第2クール
2012年2月−3月 第3クール
1クール内に、4〜5回実施
福岡市就労自立支援センター トヨタ財団
地域社会プログラム
平成24年度
(2012)
「演劇コミュニケーション講座」
2012年5月ー7月 第4クール
2012年8月ー10月 第5クール
2012年11月ー2013年1月 第6クール
研究会を各クール終了時に開催
※研究会とは、ファシリテーターや職員等による事業紹介を兼ねた勉強会
6月 COCOROOM(大阪市)視察
福岡市就労自立支援センター トヨタ財団
地域社会プログラム
平成25年度
(2013)
「演劇コミュニケーション講座」
2013年4月ー6月 第7クール
2013円7月ー8月 第8クール
2013年9月ー11月 第9クール
2014年1月ー2月 第10クール
事業検証に、古賀弥生氏(アートサポートふくおか/活水女子大学)が参画
福岡市就労自立支援センター AMCF 自主財源
平成26年度
(2014)
「演劇コミュニケーション講座」
2014年3月ー5月 第11クール
2014年6月ー7日 第12クール
2014年9月ー10月 第13クール
2014年12月 第14クール
2015年2月 第15クール
状況に応じて、1クールを3回、または4回に変更
福岡市就労自立支援センター 年賀寄付金配分
社会福祉増進
平成27年度
(2015)
「演劇コミュニケーション講座」

抱撲館福岡 ファイザープログラム
心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援


4,プログラム紹介

『演劇コミュニケーション講座』プログラム
【全体の目的】
想像力に特化したコミュニケーションを体験し、社会生活の中で活かす視点を手渡す

【共通テーマ】
「人は、ひとりひとり違うという面白さを知る」

【各回のテーマ】
1,共通点と違いを想像する
2,受信に注目して伝え合う
3,言葉を選択し、発信する
4,話し合いを通して、一つの考えをつくる
5,視点をかえて、価値を見出す
6,会話を通して、つながりを共有する


5,ファシリテーター紹介

プログラムリーダー
ファシリテーター
山田恵理香
   
  九州大谷短期大学国文学科演劇放送コース卒業。1995年より福岡を拠点に活動を開始。 人間が秘めている本質を炙り出す演出は数々の衝撃作と問題作を生んでいる。 2005年利賀演出家コンクール((財)舞台芸術財団演劇人会議主催)にて優秀演出家賞を受賞。 馬山国際演劇祭をはじめとした招聘公演も多く、アジア各地で公演を行う。俳優育成や演劇普及にも力を注ぎ、 2004年からは(公財)福岡市文化芸術振興財団演劇ワークショップ事業の進行役として活動。 現在は進行役として、小・中・校の教育現場をはじめ公民館や職場のコミュニティにまで幅広く活躍中。 「空間再生事業 劇団GIGA」所属。日本演出者協会理事。
     
ファシリテーター
五味伸之
   
  演出家・俳優。参加者の体験を再構成し劇化する作品創作を得意とし、 実験的に様々な上演形式での演劇作品の発表を行っている。 2009年、韓国釜山市の大学TongMyong大学での招聘公演を皮切りにアジアでの上演も多く行っており、 2011年〜2014年香港の演劇祭「Small Theater Big Drama」(香港)に毎年招聘され公演を行う。 小学校での演劇ファシリテーターとして活動。演劇的お化け屋敷を作る「福岡恐いもの研究会」(2012年〜)、 福岡市立青年センターとの共催イベント「くうきプロジェクト」(2010年〜)の代表も務める。 無倣舎代表。日本演出者協会協会員。 
     
     
ファシリテーター
古賀今日子
   
     
ファシリテーター
田坂哲郎
   
     
ファシリテーター
幸田真洋
   


6,新聞報道

2014年1月28日 毎日新聞 日刊 掲載
2014年3月25日 朝日新聞 日刊 掲載
2015年4月14日 西日本新聞 日刊 掲載


7,公開研究会等

2015年11月3日
『演劇と社会』舞台芸術からのソーシャルインクルージョンへのアプローチ事業研究会



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